第19章 【虎杖悠仁】ときめき
「この前のデートどうだったの、」
一方同じ時刻。
桜ヶ丘女学院の1年の教室にて、こちらも同じく問答を迫られている人物が一人。
同級生である美々子と菜々子の間に挟まれた少女は、肩を竦めて困ったような表情をしている。
「デートじゃないって……。一緒に遊んだだけだよ」
「それを世間一般にはデートって言うんだけど」
「あ、傑兄さんからライン来た」
「あれ、菜々子ってお兄さんいたっけ?」
「うちらの従兄の兄さんだよ。超かっこいいんだから」
白い歯を見せて笑う菜々子には「そうなんだぁ」と間延びした返答をしてきた。
「進展は見込めないってさ」
「ヘタレだね」
菜々子の言葉に美々子は大きなため息を吐いた。
なんの話をしているのかわかっていない渦中の少女は、残り少なくなったお茶を飲み干した。
二人で何かを話している様子をぼうっと見ながら、馨はスクールカバンにぶら下がるぬいぐるみのキーホルダーを見つめる。
思い出すのは去年の誕生日の日の事。