第12章 【石神千空】プラネタリウム
「なにこれ?シャーペン?」
「上についてんの土星じゃね?」
「土星ってなに。どっせーい!って掛け声かなんか?」
「お前馬鹿だろ。惑星の授業したじゃんかよ」
「猿の惑星なら知ってる」
五月蠅い笑い声が響く。
なんだよ、なんだよ。
土星のシャーペンかわいいじゃんかよ。
そう思うなら返してよ。
石神くんに渡らなくてもいいから、せめて、せめて、あのシャーペンを大事に使ってくれる人の元へ行って欲しかった。
悔しさ、恥ずかしさ、苦しさ、惨めさが入り混じった感情を押し殺し私は唇を噛みしめる。
こんな思いをするなら、クリスマスなんて、プレゼント交換なんて、したくなかった。
溢れ出しそうになる涙を必死に抑え、私は自分が貰ったプレゼントの中身を開けた。
貰って嬉しくないものでも、私は大事にするよ。
あいつらみたいな人間にだけはなりたくないから。
そう思っていた私の心はすぐに打ち砕かれた。
掌に転がる二つの小さなフィギュア。
一つは宇宙飛行士の服を着ているミニフィギュアで、もう一つはミニチュアのロケットだった。
これが誰の物か、考えなくても分かる。
単純な私の心はたった二つの小さな贈り物で、さっきまで黒く歪んだ感情で支配されていたのがどうでもよくなった。
嬉しい、嬉しい。
こんなに嬉しい贈り物は他にない。
大事にする、大事にするに決まってる。
喧騒の中、私はそれを優しく抱きしめ一人静かに涙を零した。