第12章 【石神千空】プラネタリウム
「ワオ。乙女だねちゃん」
「からかわないでよ」
「ふふ、きっと喜んでくれると思うよ」
「それって、どういう意味……?」
「さぁ、どういう意味だろうね」
楽しそうな杠ちゃんの言葉に変に期待してしまう。
もしかして……と。
でも、そんなはずはない。
彼とまともに話したことは数回しかないし、彼にとって私はただ同じ教室で同じ時間を過ごすただのクラスメイト。
それ以上でもそれ以下でもない。
だからこそ杠ちゃんが羨ましい。
「杠ちゃん」
「なんだい?」
「…………相談、するかも……。いつかは、わかんないけど……」
今まで隠していた気持ちを吐露してしまえば、彼に寄せている密かな慕情の一つ一つを、話したい衝動に駆られた。
気持ちの再確認とか、共感し合いたいとか、そういうんじゃなくて、私は私の行き場のない気持ちを吐き出したいというだけで、それ以上の理由はどこにもなくて、つまり私は……。
聞いてほしいだけだ。
「うん、いつでも聞くよ」
私の抱えているどうしようもないほどくだらない本音を。
「ありがと……」
小さな声は彼女の耳に届いたようで「乙女だね」とまた揶揄われた。
だけど嫌な気分は一つもしなかった。