第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
バクゴーたちがインターンに来るときは、前日か前々日にエンデバーさんからの報告が必ずある。
次に彼らがこの事務所に来るのは明日の夕方のはずだ。
なぜ、昼間からいるんだ。
これからパトロールにでも行くのか、ヒーロースーツに身を纏った彼らは私の姿を見ると挨拶をしてくれた。
一人は、明るく眩しい笑顔で「おはようございます!」と。
一人は、凛とした表情で「おはようございます」と。
一人は、仏頂面の小さい声で「……っス」と。
三者三様とはまさにこのことだな。
「驚きました。明日の夕方に来るものだと思っていましたから」
「その予定だったが、学校が午前で終わったからと焦凍から連絡があってな」
「なるほど」
自分に必要なものや足りないものを手に入れようと藻掻く少年たちに視線を向けると、いつパトロールに行くのかと落ち着きなくそわそわしている。
「散歩に行きたい犬みたい」
「あ!?誰が犬だ!!」
そうやって噛みついてくるところだよ。
心の声をそっとしまい込んだ。
少しだけ困ったように笑うデクが「あの、そろそろパトロールに……」と言った。
「あ、うん。いってらっしゃい。気を付けてね」
いつものように見送る私に言葉に3人はきょとんとした表情を零した。
はて、私は何か変なことでも言っただろうか。
暫く私達の間に静寂が訪れたが、「言い忘れていた」と言うエンデヴァーさんの声に私達の目は彼に集中した。
八つの目が集中しているからか、それとも何か言いづらいことでもあるのか、エンデヴァーさんは何度か咳ばらいをして私をじっと見つめたあと、視線を反らし、また一つ咳を落とした。