第11章 【五条悟】死んだ方がマシだった【R18】
社会人2年目。
貯金額100万未満。
足りるわけがない。
足りるわけがないと、わかっていながらは震える声で搾り出すように尋ねた。
「き、金額は……」
「一千万だ」
「いっ……⁉」
あまりの額に、は言葉を失ってしまった。
「コイツなぁ、質の悪い遊びしてさぁ……。ここ以外にも他の店踏み倒してんだよ」
そんな事ばっかしてるから、僕みたいなのの出番になっちゃったわけなんだけど。
笑いながら話しているのに、目が少しも笑っていない。
怖い……。
「そんなん払えないだろ?だからな、ちょっと自分で頑張って稼いでもらおうかな」
男が弟の横にストンと腰を下ろす。
びくりと弟の肩が動いた。
「結構かわいい顔してるから、それなりに売れると思うよ」
「お、おれ……、僕、男だし……それに16……」
「うんうん知ってるよー。だから、な、ちょっと裏で、ね。大丈夫、ちょっとキツいかもしんねーが、自分でやったことだろ……?」
口調が変わる。
男の目が、冷たく光った。
いやだぁ……っと弟がうずくまる。
男の言っている裏とはつまり、体で身売りをしろということだろう。
そういう話にあまり詳しくないでも、その意味は分かった。
弟が知らない誰かの手によって汚されて身も心もボロボロになる姿など見たくなかった。