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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ






「資料室で寝てたら、」

漸く口を開いたと思ったら、徐々に声が小さくなっていく。

「誰かがかけてたんだよ。……起きた時、寒ぃって思わんかったから」

できたら、直接……。

私が聞き取れたのはそこまでだ。
最後まで聞き取れなかったけど、それだけで十分だ。
粗暴で不良な君にもそんな可愛らしいところがあったのか。
驚くと同時に抱きしめてそのツンツン頭を撫でまわしてやりたい。
そんな気持ちを押し殺して「そうなんだ」と至極冷静に頷いた。

貰ってしまえばいいんだよ、バクゴーに似合うから。

なんて、言えたらいいのに。

「見つかるといいね」

持ち主は目の前にいるのに。
持ち主?
いやいや違うよ。
これはバクゴーにプレゼントするために買ったものだ。
最初から私のものなんかじゃない。
本当はバクゴーの憎まれ口を言いながらも貰ったものはきちんと受け取る姿を見たかったけど、先ほどの言葉で十分だ。
むしろ、見たかった姿よりも何よりも尊い。

一瞬で満たされた心を曝け出さないように気を引き締め、できるだけいつも通りに「そろそろ時間じゃない?気を付けてね」と言った。
バクゴーたちは明後日から学校が始まる。
次に彼らがインターンに来るのは来週の土曜日だろうか。
明後日は晴れるといいな、なんて思ったりして。
バクゴーは「誰に言ってんだ!!俺を心配してんじゃねぇ!!」と全力で噛みついてくる。
悪意を込めたつもりは一切ない私の言葉を曲解して、敵意をもって打ち返してくる様子に笑ってしまった。
心の内側を覆い隠そうともしない素直さは健全で心地が良い。

「いってらっしゃい」
「……おー」

私は、覆い隠してばかりいるから君が眩しい。



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