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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第10章 【狗巻棘】舞台、閉幕。






昨日見たドラマの物まねをすれば、意外とウケが良くて調子に乗った。
気分が晴れていくのが自分でもわかった。

「次、やります!!」
「いいぞ、いいぞ~」

ケラケラ笑う彼らの声援を耳にしながら、物まねを披露しようとした時。
扉が音を立てて開いた。
そっちに視線を移すと、ずっと待っていた人物二人が同時に入ってきた。

「もぉ~遅いよ、二人とも」

悟が腰をくねらせながら、二人の肩を掴み教室の中へと引きずり込む。
恵を見れば、これ以上ないくらい目が死んでいた。

「やっと来たな。お前らを待ってたんだよ」
「高菜」
「昨日見たドラマの物まねだってよ」

本日の主役が何やってんだって目で私を見る棘。
でもおかげで今棘を見ても大丈夫になった。
そうじゃなかったら絶対今、目なんて合わせてらんないもん。

仕切り直し、とでも言わんばかりに咳ばらいを一つして、再び教壇の上に立った。

大きく息を吸って。
そして気が付いた。
この状況は、夢と同じだ。
違うのは、棘以外の人間もいると言う事。
気が付いたけど、遅かった。
私は吸った勢いのまま、ドラマのセリフを吐き出した。

「実の兄だろうと関係ないわ。私はお兄様を愛しています!」

震える声で私は叫ぶ。
実の兄に恋をした妹。
禁断の愛。
私たちの恋は禁断ではないけれど、決して結ばれてはいけない。
今更になって自分のセリフが胸に刺さる。

「私を引き裂いて私の魂をみてください。そこに私の本当があります!」

泣き出したくなった。
たとえドラマのセリフだとしても、棘に聞いてほしくなかった。
昨日の夢のせいだ。
棘の気持ちが痛いほど伝わってくる。

棘の気持ち。
棘の本音。
こんなに私を想っていたなんて。




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