第10章 【狗巻棘】舞台、閉幕。
そして誕生日当日。
パーティーはお昼を少し過ぎたあたりから。
恵の任務が終わる時間に合わせた。
幸か不幸か。
この日、任務がないと言っていた棘も急な任務が入ったために朝からいなかった。
ホッと胸をなでおろす。
思い出すは今朝の夢。
なんであの夢を見てしまったのか。
誕生日だと言うのに、なんでこんな重い気分にならなくてはいけないのか。
教室のカーテンをを見る度にキスを思い出す。
今は棘に遭いたくなかったから本当に良かった。
逆に、恵に会いたい。
一秒でも早く。
「、何かあったのか?」
「え?」
「誕生日だってのに、暗いじゃん」
「あたりまでしょ~真希。だぁいすきな恵がいないんだもん。ね~、」
「悟、今ちょっと黙ってて」
「酷い……」
床に倒れ女の子座りをしながらしくしく泣く190㎝以上の28歳男児を無視し、私はぐっと背伸びをした。
教室には、恵と棘を除いた人間が集まっていて、あとは二人が帰ってくるのを待つだけ。
「!!物まねします!!」
「いきなりどうしたんすか、先輩」
手を挙げて、教壇の上に立つ。
驚いた顔がいくつも私を注目している。