第10章 【狗巻棘】舞台、閉幕。
頭の中でぼぅっとそんなことを考えていると、私の前に誰かが立ったのか、影ができた。
顔をあげれば、大好きな恵が心配そうに顔を覗き込ませていて。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。明後日の誕生日のこと考えてたら、寝不足なだけ~」
「子供かよ……」
「恵よりは大人ですけど?」
「はいはい」
呆れたような口調だけど、その唇は優しく弧を描いている。
恵のこの笑顔が好き。
ずっと見ていたい。
ずっとそばにいたい。
恵の笑顔を自分だけのものにしたい。
「さん」
「ん~?なぁに、めぐ……み」
名前を呼ばれて、顔をあげると。
唇に恵の唇が重なった。
リップ音と共に離れる唇。
真っ赤になった私の顔を見て、恵がプッと噴き出して笑って。
「誕プレ、楽しみにしていてくださいよ」
と、眩しい笑顔を見せるものだから。
今日この日を、「がキュン死した日」として祝日にしてほしい。