第10章 【狗巻棘】舞台、閉幕。
私の誕生日が明後日に近づいてきた。
毎年毎年もらう誕生日プレゼントは、大切にしている。
「ありがとう」と笑って。
だけど棘は知らない。
彼がくれる誕生日プレゼントは全部恵とかぶっている。
ぬいぐるみ、ネックレス、ピアス……。
デザインや色は違うけれど、同じなのだ。
それを大切にしまっている。
ネックレスやピアスとかのアクセサリーは恵とデートするときだけ。
それ以外ではつけない。
そうでもしないと棘を傷つけてしまうから。
何でこんなにも被るんだろうと疑問に思った。
けどすぐにその答えはわかった。
一つ下の後輩である野薔薇が、恵と棘に同じ雑貨屋を紹介していたのを耳にした。
だから問い詰めた。
なんでそんなことをするのか、と。
そしたら野薔薇は前髪をかき上げて、私を睨んだのだ。
「傷つけないのが優しさだと思ったらそれは大間違いっすよ。傷つけるのも優しさの内なんじゃないんですか」
「………」
「いつまでも隠し通せるわけ、ないじゃないですか。さんも同じくらい傷付いているくせに」
「………」
「私は、同期が傷つく姿も、尊敬している先輩が傷つく姿も、大好きな先輩が傷つく姿も、何も見たくないんです。早く、解放してあげてくださいよ」
それだけ言って、野薔薇は私の前からいなくなった。
これが彼女なりの優しさだって分かっているし、皆の事を思っての言葉だともわかっている。
分かっているけど、どうしたらいいのかわからない。
だってずっとそうやって演じてきたから。
演じるのをやめた時、一体どうなるのか、私には想像ができない。
棘を、棘の、傷つく姿を、もう二度と見たくないのに。
私が、私の手で傷つけることが優しさだなんて。
そんなの優しさなんかじゃない、残酷な行為だ。