第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
「おい、これの持ち主知ってるか?」
バクゴーが深紅のブランケットの持ち主を探しているらしい。
という噂を聞いてから3日後のこと。
彼は私のところにもやってきた。
これてめェのか、なんて聞かれたら素直に受け取ろうと思ったけど、私の物だと思ってもいないみたいだったから知らないふりをした。
「落とし物なら、一階の遺失物拾得物窓口に持って行けばいいのに」
「……見つからなかったらそうするわ」
「何か……預けられない理由でもあるの?」
いつもの威勢のよさはどこにもなく、少しだけ唇を尖らせるバクゴーは私から目線を反らし押し黙った。
ブランケットの先が持ちあがるように揺れ、バクゴーが布を握る力を強めたのだとわかった。
「タグが付いたままだから」
「それで?」
「誰かが持っていっちまうんじゃないかと思ったんだよ」
「そこまで甘くないでしょうよ、ここは」
「……おー」
バクゴーのこんな姿を見るのは初めてかもしれない。
そんなことを気にするような男だったのか、君は。