第3章 【爆豪勝己】盲目をつきやぶれ
そういえば。
私のデスクの引き出しに深紅のブランケットがあった。
買ったばかりでまだタグも切っていない新品。
誰も私のものだと知らない。
袋に入ったままのそれは。
今まさにここで使うべきものだ。
デスクの一番下の引き出しを開けてブランケットを取り出し、寝ている子供のいる資料室へと戻る。
誰にも見られていないことを確認して、寝ている子供を起こさぬよう足音を殺して、そっと資料室の扉を開ければ、変わらぬ体勢のままの彼が、規則正しい寝息を立てている。
内から湧き上がる何かはきっと母性本能だろう。
溢れる笑みも吐息も眼差しも、母親息子にが抱くそれに違いない。
深紅のブランケットを肩にそっとかける。
薄い金色の髪に深紅のそれはまるで絵画のようで眩暈がするほど美しかった。
もうすぐクリスマスだからと。
頑張っている彼になにかプレゼントをと。
そう思って選んだその色に間違いはなかった。
力強く目立つその色は、少年の瞳と同じ色。
早くここから立ち去らなければ。
ああ、でもまだもう少しだけ彼を眺めていたい。
だけど、知られてはいけない。
他の誰にも、バクゴー本人にも。
特別扱いをしていることは、知られてはいけないのだから。