第15章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【2】
『ダセェな、お前。弱い心を隠すための虚栄心だけじゃねえか、立派なのは』
考えないようにしてた。
考えたくなかった。
そうだと認めてしまうのが怖かった。
だが、黒い炎の言葉は蛇のように切島の心を蝕んでいく。
視界が歪み、冷たい何かが頬を伝った。
それが涙だと気が付く頃には、切島の精神は崩壊寸前だった。
『上っ面だけそれらしく振るまって、向き合うどころか逃げ帰ってくるような人間が、なんでヒーローになれると思ってんだ。勘違いして恥ずかしくねえの』
「ち、違う……おれはただ、紅頼雄斗みたいな漢になりたくて……」
『他人のピンチに飛び出せもしてねえのに?』
「……っ!」
『心でカバー、だっけ?その心すらカバーできてない奴が何を偉そうにしてるんだ』
楽しそうに嬉しそうに軽快に笑う黒い炎は、床に跪いて涙を流す切島を見下ろす。
絶望や恐怖で憔悴しきった切島は、小さく何やらブツブツと呟いている。
その声はあまりにも小さくて耳を澄ましても聞こえることはないが、黒い炎だけはにんまりと笑って「そうだよ」と切島の言葉を肯定する。
『オマエはヒーローどころか"漢"ですらねぇよ』
化け物の声がひどく重たいものとなって切島の心を抉る。
もうこれ以上何も聞きたくも見たくもなくて、切島は静かに目を閉じた。
その方が幸せな夢を見れるような、そんな気がしたから。
遠のく意識の中、化け物の笑い声だけが聞こえる。
それも次第に聞こえなくなり、切島の意識は深い闇の底へと沈んでいった。