第9章 【狗巻棘】舞台、開幕
寮へと戻ると、ちょうど真正面から幼馴染がるんるんと軽い足取りで歩いてきた。
。
俺の幼馴染。
好きな人。
そして、恵の彼女。
俺は恵の彼女を好きになった。
好きになった早さで言えば俺の勝ち。
だけど想いを伝えた早さは恵の勝ち。
俺の方が彼女のことを想ってるだとか、俺の方が早く彼女のことを好きになったとか、そんな女々しいことは考えてないし、考えたとしても自業自得に過ぎない。
だから、何を想っても何をやってももう手遅れ。
今更自分の気持ちを伝えたところで、彼女は俺の事を見てはくれない。
「あ、棘~」
俺の姿に気が付いた彼女は、大きく手を振って足早に歩いてくる。
プレゼントを見られたくないから、後ろに隠した。