第15章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【2】
「そうなんだ。じゃあ、オレたちと同じ高校に行こうぜ」
無邪気に笑う旧友に力なく笑みを零す切島は、「そろそろ帰る」と言い、教室を後にした。
教室を出る時、事情聴取が終わった芦戸たちが入れ違いで教室に入り、切島と目がバチリと合う。
嫌悪するような軽蔑するような冷徹な瞳が切島を見つめ、彼は再び逃げるように駆けだした。
身体の中の温度が急激に冷えていくような、そんな感じがした。
とにかく早くここからいなくなりたかった。
走って走って走って。
気が付くと、切島は自分の部屋にいた。
息を乱す彼は壁に貼ってあるポスターに目を向ける。
切島は自分の"個性"があまり好きではなかった。
芦戸のように派手な"個性"でもなければ強力な"個性"でもない。
それでも、切島は信じていた。
心に漢気があれば"個性"なんて関係ないと。
切島は信じていた。
目一杯身体を鍛えて足りない"個性"は心でカバーすれば大丈夫だと。
切島は信じていた。
自分と似たような"個性"を持ったこの人のようなヒーローに慣れると。
そう信じていた、今の今まで。
しかし、それは崩れ去った。
『なんにもできなかったな』
自分しかいないはずの部屋から声が聞こえ、切島は勢いよく顔をあげた。
真っ黒な炎に包まれ不気味に白く光る眼をした"何か"が壁のポスターの中からじっと切島を見つめていることに気が付き、恐怖で後ずさる。
そんな切島の様子を見ていた黒い炎は声をあげて笑った。
ナイフのような鋭い化け物の笑い声が部屋中に木霊する。