第15章 【ヒロアカ】Who killed Cock Robin【2】
なんで動けなかった。
なんで動かなかった。
「仕方ねえよ、鋭ちゃん」
「そうだよ、そんな落ち込むなって」
肩を叩かれ切島は後ろを振り向いた。
そこには学ランを来た旧友の姿があった。
先ほどまでの景色は消え去り、夕焼け差す教室に彼は立っていた。
俺、さっきまで外に……。
混乱する頭は状況を整理できず、流れる時間に身を任せるしかない。
「芦戸たちは……?」
「警察に事情聴取されてる。誰もケガしてねえって」
「そっか……」
なんで動けなかった。
なんで動かなかった。
何度も何度も頭の中でリフレインする言葉。
答えは一向に出てこない。
「そういや、進路決めた?」
「あ、いや……」
「あれ、雄英に行くって言ってなかったっけ?」
友人の声に切島の肩はびくりと揺れた。
ヒーローになるための育成機関。
そこへ行き、憧れのヒーローになると決めていた切島だったが、"あの光景"がフラッシュバックしこんな自分が果たしてヒーローになれるのかと問う。
「いや、雄英には行かない……」
切島は静かに呟いた。
怖かった。
嫌だった。
未来のことを、夢に見たヒーロー像を想像するのが。
自分の弱さを見たくなくて、認めたくなくて、切島は自分の心に蓋をする。