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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第9章 【狗巻棘】舞台、開幕






「いらっしゃいませー」

任務のない、休日のある日。
俺は、出かけていた。
任務がない、とはいえ。
いつ何があるかわからないから、私服ではなく高専の制服で原宿を歩いていた。
そしてとある店に足を運ぶ。

そこは女の子の集まる雑貨屋。
周りは中学生や高校生がいっぱいいて8割が女性で2割がカップル。
そんな中に男一人でいるこの状態。
正直耐えられないし、1分ももたない。
逃げたい。
けど、逃げる訳にはいかない。
俺は、とある目的のためにここにいるのだから。

とはいうものの、やはり居づらい雰囲気と言うか、居心地の悪さを感じてしまう。
のは、一人でいることに対して周りがこっちを見てニヤニヤと笑っているからだと思う。
早く、目的のものを買ってここから去ろう。
と言う時に限って、どうして人は人を追い詰めるのだろうか。

「何かお困りですかぁ?」

逃げられない状況が、俺の前にやってきた。

必要以上に高い声。
体が強張る。
話しかけないでほしいオーラを出していたというのに、話しかけてくるなんて……。

「彼女さんへのプレゼントとかですかぁ?」
「しゃ、しゃけ……」
「え……?しゃけ??」

誰も呪わないためにおにぎりの具でしか会話をしない俺に、店員は目を点にした。
こういう時、真希やパンダがいればいいんだけれど。

しどろもどろになりながら、俺は必死に店内を見渡す。
もうなんでもいい。
なんでもいいから早くこの場を立ち去りたい。



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