第8章 【夏油傑】ひとでなしの恋【R18】
「そんな風に思ってるなら、なんで相談してくれなかったの。なんで何も言わないでいなくなったの。なんで……。何で今になって……ずるい」
「ごめんね、ずるい私で」
「私は、傑に着いて行ったってよかった。呪詛師になったってよかった」
何も相談されなかったこと。
何言われずに置いていかれたこと。
きっと夏油のことだから相談すれば、着いて来いと言えば、何も言わずに何も疑わずには着いて来ようとする。
そういう馬鹿な女なのだ、という女は。
そんな女を好きなったのだ、夏油という馬鹿な男は。
「傑が置いて行ったから、私だって傑を置いていくんだよ!!傑が何も言ってくれなかったから私も何も言わないの!!」
「……」
キスをしても、激しいセックスをしても、昔のように幸福で胸が甘く痛むことはないと思っていたのに。
原始的な反応が身体のあちこちに勝手に現れるだけだと思ってたのに。
目の前の男に、すべてを委ね善がってしまった。
「、こっちを見て、」
まるで幼い子供に言い聞かせるようなそんな声だった。
夏油はの頬を掌で包み込むと、下から彼女の顔を覗き込む。
赤く濡れそぼった唇に軽くキスをしリップ音を立てる。
嫌がる素振りを見せない彼女に男は再びキスをした。