第8章 【夏油傑】ひとでなしの恋【R18】
好きな人がいる。
幸せになってもいいんだよと言ってくれた優しい人。
全てを包み込み、全てを許してくれるかわいそうな人。
そんな人をは心の底から愛した。
彼のことを本気で想っているなら、今すぐに目の前の男を殺すべきだ。
右手を伸ばした。
届かない距離じゃない。
もう少し伸ばせば、触れる。
の行動を夏油は黙って見ていた。
もし、彼女が自分を殺すのであれば、それはそれでいいと思った。
本望だった。
ここで死んだとしても、悔いはないと胸を張って言える。
だから、夏油は、動かなかった。
彼女はそれに気が付かない。
あと数ミリで届く。
はずだった。
「………っ」
静かに涙を流して、顔を覆うに夏油はほんの少しだけ目を見開き、息を吐いた。
身体を起こしたことで、抜けてしまった昂りを再び彼女のソレに宛がう。
どのくらいの時間彼女を抱いていたかは分からないが、少なくとも夏油は3度、彼女のナカに己の欲望をぶつけていた。
のナカから、白濁の液体がこぽりと絶え間なく溢れ出す。
「もったいないね」
静かにそう呟いて、指で掬い上げると嗚咽を漏らす彼女の口元にそれを運んだ。
涙を流すだけの彼女の口内に精液のついた指を無理矢理押しつける。
「いい子だ」
指についた液体を舐めとり、ごくりと降下するのを確認した夏油は優しく穏やかな笑みを浮かべ、の前髪をかき上げると露わになった額に唇を落とした。
そのまま瞳や鼻、頬へとキスをしていく。
拒むことなく馨もそれを受け止める。
数秒、彼等の瞳がぶつかり合った。
黒い瞳がを映していることをの瞳が捉える。
静かに、ゆっくりと、柔らかく、酷く冷たい唇が、の唇に触れる。