第8章 【夏油傑】ひとでなしの恋【R18】
脳裏に蘇るは、いつの日かの思い出。
あの頃は一緒にいるだけで心は満たされ、幸せだった。
身体中に散らばる鬱血痕や噛まれた傷跡が、綺麗な記憶を塗り潰し黒く淀んだ感情へと変えていく。
どうして。
今更になって。
こんなこと。
悔しさや惨めさから涙が溢れる。
夏油の上に跨り、下から好きなように揺さぶられる。
鼻にかかった甘ったるい声が、ぶつかる肌の音が、お互いから零れる水音が、部屋に、耳に、脳に、木霊して、全てが気持ち悪くて吐き気がする。
気持ち悪くて、気持ちが悪いはずなのに、吐き気がして仕方が無いはずなのに、はそれを拒むことができずにいた。
それすらも気持ち悪い。
「何を、考えているのかな?」
「うあっ、あっ……、」
最奥を強く突かれ、甘美の声をあげる。
痙攣のように震えるの身体は、既に快楽の海に沈んでいた。
ベッドの端に転がる黒く冷たい塊。
行為を及んでいるこの場には不釣り合いのものがの視界に入る。
本当に嫌なら、それを手にすればいいだけのこと。