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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第8章 【夏油傑】ひとでなしの恋【R18】






その様子を数分前から眺めていた夏油は決して大きくない瞳を見開き純粋な疑問を投げかけたのだ。
まさか見られていたとは思わなかったは顔を真っ赤に紅潮させ、結局、奇行に走ったわけを夏油に正直に話した。
大きな口を開けて声をあげて目じりに涙が溜まるほど笑う夏油。
幾分か笑って落ち着いた彼は、ゆっくりとを引き寄せた。
骨ばった指の一本一本が、筋肉の付いた逞しい腕が、の柔らかい皮膚の触れる。
セックスしている時の方がたくさん肌に触れているし、身体の内側から繋がっているというのに、何故だろう。
抱きしめあっている。
ただそれだけのことなのに、昨日した激しいセックスより、今の方が夏油と心も身体も繋がれている気がする。
は、いつのまにか静かに寝息を立てている夏油の寝顔を見つめた。

少しだけ、体勢がきつくては夏油を起こさないようにゆっくりと身体を起こした。
カーテンの隙間から漏れる日の光。
空気中に漂う埃が日に当たってキラキラと光る。
まだほんのりと寒い朝の気温。
床に散らばる2人分の衣服と下着。
まるでそれらは自分たちの抜け殻のよう。
は小さく笑みを零し、夏油に背中を向ける形で布団に潜り込んだ。
夏油の右腕を手繰り寄せ、自身の右の胸に当てる。
ちょうど彼の人差し指が突起した蕾に触れる様に。
夏油はまだ知らない。
これが彼女が好きな、落ち着く体勢なのだと。

緩やかに過行く時間、時計の秒針の音、耳元で聞こえる愛する人の吐息、それら全てを感じながらもまた静かに瞼を閉じた。



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