第7章 【禪院真希】花吐き病
翌朝、私はゴミ袋を持って高専から少し離れたゴミ捨て場へと持って行く。
何重にも重ねられたゴミ袋の中には、いろんな色のいろんな種類の花が詰められている。
私の想いはゴミと処理され燃やされる。
花を吐いている時点で想い人がいると言うのに、私は見ない振り知らない振りをするかのように踵を返し、教室へと向かった。
「カァッ」
高専へと戻っている道中、烏が鳴いた。
電信柱。
真っ黒い色のそれは、まるであの人を連想させる。
真っ黒い制服に身を包み、綺麗な黒髪をポニーテールにして束ねる姿はまさに烏の色と似ている。
頭の中に浮かび上がる想い人。
禪院真希。
東京都立呪術高等専門学校2年生で同級生の女の子。
そして私の片思いの相手。
私の病気が治るには、彼女と両思いにならなければならない。
結論から言うと、私のこの花吐き病は治らない。
異性ならまだしも可能性があったかもしれないけど、よりによって同性だ。
どう頑張っても可能性なんて0.1%もない。
私の恋は、叶わない。
「……うっ!!」
私は口元を抑え、その場に蹲った。
口から溢れるはコリウスの葉。
花言葉は"叶わぬ恋"。
うるさい、わかってるよそんなこと。
心の中で毒ついて、あふれる涙をこらえ、コリウスの葉をポケットにしまった。