第7章 【禪院真希】花吐き病
ふぅ、と短く息を吐き濡れてもいない口元を拭う。
何度も吐いているため、痙攣する胃にも苦しさにも気持ち悪さにも慣れた。
手慣れた手つきで、吐いた花を拾いごみ箱に捨てる。
赤や青の色とりどりの花が集まるその中で、一際目立つ真っ赤な薔薇の花びら。
今までで一番吐いた花の花言葉は"貴方を愛している"。
花言葉になんて興味がなかったのに、こんな病気で詳しくなってしまったことが憎たらしい。
「……っ」
唇を噛みしめ、前髪をくしゃりと握った。
深く長い息を吐き、私はゴミ袋の口を固く結び、それをベッドの下に隠し毛布の中に隠れるように眠りについた。
充満する花の甘い匂い。
とうの昔に、この匂いにも慣れた。