第7章 【禪院真希】花吐き病
薄暗い部屋の中、えずく様な声が響く。
うえっ、と漏れる声と共に喉の奥から込み上げてくる「それ」は、嘔吐物ではなく、色とりどりの小さな「花びら」たち。
私は、嘔吐中枢花被性疾患という病気を持っていた。
通称、花吐き病と言われている。
室町時代から突然始まった病気で、潜伏、発症を繰り返しながら現代まで続いている奇病。
らしい。
今は患者の数もだいぶ減ってはいるが、"0"ではない。
明確な治療は見つかっておらず、社会の認知度も低く、吐いた花に他人が触れれば、感染してしまう。
発症する理由は、片思いを拗らせ続けること。
両思いになれば、それは治るとのこと。
言葉にすれば簡単そうに見えるけど。
実際問題そんな簡単にいくはずもない。
現に私が花を吐き続けているのだから。