第6章 【石神千空】人はそれを○○と呼ぶ【R18】
「文明を復活させるために頑張ってるのはわかってんるんだよ、私だって……。でもさ、ちょっとは気にかけて欲しいとも思ってるの」
彼女曰く、最近の千空は以前よりもまして科学にのめり込んでいるという。
特に、同じ科学チームであるクロムやカセキといる時が一番楽しそうだとも。
「それに千空くんの周りには人が溢れているでしょ。杠ちゃんにコハクちゃん、スイカちゃんもそうだし。ルリちゃんとは結婚だってしたし!!!私だって千空くんと結婚したことないのに!!ズルい!!」
地面に顔を伏せてワーワーと泣く彼女の姿に氷月は息を吐いた。
その話はコハクくんから聞いたが、目的を果たすためのハッタリだったに過ぎないと聞いている。
つまり口八丁で言葉だけの契り。
そんなものに強い結びつきがあるなんて誰も思いはしない。
それに、科学オタクで恋愛脳なんて持ちあわせていない彼が、特定の誰かと付き合っているのだからそれだけで愛されているのではないのか。
そう思ったが氷月はそれを伝えることはしなかった。
なんだか面倒なことになりそうな予感がしたから。
「………秒で離婚したんでしょう?」
口にできたのはその事実のみ。
「そうだけど……そうじゃない……」
「好きな人の一番であり続けたいと思うのは普通だよねぇ。結婚なんて、一生を添い遂げる仲なわけだしねぇ。それをないがしろにされたようで嫌だってことでしょ」
ぐすぐすと泣き続ける彼女に頭上から優しい声が降り注ぐ。
目を細めて口角をあげるモズの表情はおもしろいものを見るようなものだったが、今の彼女にとっては表情なんてどうでもいい。
ただかけられた言葉が嬉しかった。
自分の思いを理解してくれるモズが、彼女にはこの時ばかりは神様に見えた。