第6章 【石神千空】人はそれを○○と呼ぶ【R18】
時は数時間前に遡る。
危険人物ということでモズと氷月は檻の中に閉じ込められていた。
食事を運ぶのは大抵彼らと同等の力を持つコハクか司だが、この日は二人とも忙しそうだったため、彼女が持って行くとフランソワに申し出た。
ここから今回のことが発展することとなる。
洞窟へと食事を持って来た彼女の姿に氷月は「珍しいですね、あなたが持ってくるなんて」と声を掛けた。
そんな彼の言葉に「みんな忙しそうで」と返答する彼女だったが、何かを思い出したのか「あの、」と二人に話しかけた。
深刻そうな表情をする彼女に二人は石神村で何か問題でも起きたのかと不思議に思って、食事に手をつけることなく彼女の言葉を待っていた。
沈黙が続いたが、それは時間にすればたった数秒のもの。
彼女は二人に向けて口を開いた。
「千空くんに嫉妬してもらうにはどうしたらいいと思う?」
「はい?」
「なんて?」
小声な上にとてつもない早口に二人は反射的に聞き返してしまった。
小さすぎてよく聞こえなかったし早口過ぎて何も聞き取れなかった。
聞き取ることができたのは"思う"という二文字。
何を思うのかさっぱりだ。
「もう一度、ゆっくり、はっきりと言ってください」
彼女は氷月の言葉に顔を真っ赤にする。
真っ赤にされたところでなにを恥ずかしがっているのか二人には皆目見当もつかない。
恥ずかしい単語を言ったとも思えない。