第6章 【石神千空】人はそれを○○と呼ぶ【R18】
「……なにかあったのか」
眉間に皺を寄せる羽京を真っすぐ見つめる千空。
羽京は強く拳を握り生唾を一度だけ飲み込んだ。
口を開きかけた時だった。
「みんな~、どうやら羽京ちゃんは千空ちゃんと2人きりで何か話し合いたいみたい!」
明るい声が研究室に響いた。
びくりと肩を揺らし後ろを振り向く羽京は、自分を追いかけてきた彼らの存在に漸く気が付いた。
羽京が"千空"に用事があることをゲンは早々に気が付いていた。
その上で、これは自分たちが聞いてはいけないことだとも。
彼だけが聞く権利を持っていると、そう思った。
「お邪魔しちゃ悪いから俺たちは退散退散っ!」
「しかし、ゲン!!羽京の様子を見るからに……」
「うん。何かがあったのは確かみたいだけど、今はここを離れよう」
「司ちゃんもこう言ってることだし、ね。コハクちゃんも」
「しかしだな……!!」
察しのいい司と龍水は、ゲンの意図を読み取り半ば強引にその場にいたメンバーを研究室から遠ざけた。
去り際、羽京はゲンを呼び止め小さな声で「ありがとう」と呟けば、彼は「なんのこと?」といった様子で首を傾げた。
そのとぼけた彼の言動に、羽京は落ち着きを取り戻した。