第6章 【石神千空】人はそれを○○と呼ぶ【R18】
最初に異変に気が付いたのは、"元"自衛隊の潜水艦のソナーマン、西園寺羽京だった。
超人的な聴力を持つ彼は、入って来た"音"に顔をあげた。
石神村から少し離れた場所から聞こえてくる"音"を最初は鳥の鳴き声だと思っていた。
しかしよく聞いてみると、鳥の声にしてはおかしい。
動物の声だろうか、それも違う気がする。
こんな色っぽく何かに善がるような生々しい鳴き声はしない。
そこまで考えて、羽京は大きく目を見開いた。
同時に辺りを見渡し"彼女"の姿を探す。
だが、どこを探しても"彼女"は見つからない。
時折、"なきごえ"と共に聞こえる乾いた音。
そして誰かの声……。
「千空!!」
研究室でクロムと共に何かの作業をしていた千空の元へ慌てて駆けだす羽京。
彼の焦った姿を見ていたコハクや司、龍水など他のメンバーも何事かと彼の後を追った。
「なに騒いでやがんだ。誰か毒キノコでも食って死んだか?」
「千空!!」
作業の手をとめることなく口角だけを少し上げて冗談交じりに笑っていた千空だったが、羽京の焦った声色とただならぬ雰囲気に何かを感じ取ったのか漸く作業の手を止め、ゆっくりと振り向いた。