第5章 【山口忠】雨音に
雨は好きでも嫌いでもない。
部活ができなくなるわけじゃないから。
毎日の天気予報も特別気にしていなくて。
梅雨の時期だからか、毎日毎日、雨模様の天気にクラスメイトやチームメイトはうんざりしているようだった。
雨の中走るの気持ちいいよ、と言った時にはみんな引いた顔をしてちょっと傷ついたのは内緒。
「うっわ……すっげえ雨」
「雲の色やばくない?」
「また中で筋トレかなあ。筋トレしたくないんだよな」
帰る時に降ったらちょっとめんどう。
お母さんにまた怒られちゃう。
それくらい。
ただ、嫌いな人が多いと思っていたから。
だから。
「雨は別に嫌いじゃないよ」
この日は珍しく晴れていたけど、グラウンドがぐちゃぐちゃだったから、男女混合の体育は第一体育館でやることになった。
体育の時山口君と同じチームになって今は審判だったから少しだけ話した。
最初はほんとうになんてことない話から。
そこでわかった情報。
山口君はピンチサーバーっていうやつでポジションじゃなかった。
ピンチの時にサーブを打って流れを変える大事な役割らしい。
スタメンではないけれどそうやって自分の出来ることを一生懸命やることはすごいと思った。
あの時ギャラリーから見た山口君の姿を思い出して、昨日より胸の痛みが強くなった。