第2章 【加茂憲紀】もしも
言いたいことも言えずに無言になってしまう。
神社に着くまでの数分間、私たちの間に会話はなかった。
その時間がやけに長くて、このまま時間が止まればいいのになんて、どこまでも女々しい自分を呪いたくなるほどに嫌気が差した。
神社に着き、二人でお賽銭をする。
がお賽銭している間、私はしゃがんで彼女の後姿を眺める。
そして最後の「もしもの時」の話をする。
「もし、私が心中しようって言ったらどうする?」
ゆっくりとは振り向く。
大きな瞳は驚いていて、すぐに後悔した。
言うんじゃなかった。
これは「もしもの時」の話じゃない。
半分冗談で、半分本気の私の願望だ。
「……なんてね。冗談だよ、あまり本気にしないでくれ」
へラッと笑う私の前に足音が近づく。
が目の前でしゃがみ込む。
私の瞳に彼女の顔が写りこんだ。
その真っすぐな瞳に、少し怖気づいたのは秘密にしてほしい。
どこまでも真剣な表情のは、小さく息を吸うと口を開いた。
「心中、する?」
意外な言葉に私の思考回路は止まる。
瞬間。
体が大きく傾いた。
目の前には澄んだ青い空と、がいる。
ああ、私は押し倒されたんだ。