第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「もう、痛くないです」
ずっと握り締めていた握り拳を気にしていたのだろうか。
性的な雰囲気など一切感じさせずに慈しむように触れられるて。
くすぐったさに身を捩ってもやまないリップ音に、は細く白い右手で五条の頬に触れた。
顔を上げた彼の目の額に、口をつける。
「知ってました?髪なんて、すぐ伸びるんですよ」
目を見開く五条の頬を、くすぐるようになぜてやる。
「生きてる限り……」
"長い"と言われ"気味の悪い"ものとして断罪された髪は今。
"綺麗"なものだと誉めて貰えた。
いい匂いだとも。
それだけで、こんなに満たされたような気持ちになるだなんて。
自分は本当に単純な人間だなと思いながら、は夢みる心地で、湿った五条の唇に自分から口づけた。
触れるだけの、拙いキス。
それでも、先程とは比べようがないほどに呆けたような顔にはついくすりと、笑ってしまった。
ふいをつかれたように表情を消した五条は、そんなに眩しそうに目を細めた後、「本当、に」と呟いた。
「かわいすぎて、どうにかなりそう……」
じっと見つめてくる熱っぽい視線に、もまた熱い吐息を吐き出した。
五条は知らないだろう。
今が、どれだけの幸せに包まれているかなんて。
再び始まる優しいキス。
血の味は、もうしない。
その顔が、ずっと見たかった、と感極まった様子で耳元で甘く囁かれる言葉に。
はようやく、五条の気持ちが本物であるということを信じることができた。
だから最後に、川崎くんの指を切っておくべきだったと真面目な顔をして吐く五条の頬を、は笑いながら思いきりつねってやった。