第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「髪ゴム……」
溢れる涙がようやく止まった後、はそっと五条を押し返した。
「あれ、先輩から貰ったものなんです。先輩は忘れてるだろうけど」
あの時の気持ちが甦る。
あのはにかむような、くすぐったいような気持ち。
子供のように泣いた男は、の言葉をゆっくりと噛みしめ小さく息を吐き出した。
きっとその吐息に、全てが詰まっている。
「歌姫から、聞いた」
「歌姫さんから?」
「それで思い出した」
どうしてここで歌姫さんの名前が。
そう問えば、道すがら歌姫に会ったと返された。
「オマエに会いたくて、謝りたくて来たのに……傷つけた」
大きな子供は、そう言ってまた身体を縮こませた。
なにをやっているのかと思う。
安いラブホテルのシーツの上でベソかいて、向き合ってるだなんて。
それでも、不思議とスッキリした。
散々泣きわめいたからだろうか。
さっきまであんなに重く感じていた体も、今は軽い。
「あれ、捨てらんなかったのは……」
だからだろうか、意識することなく、自然と言葉が口をついたのは。
「先輩が好きだったからです」
はっきりと、告げる。
五条がみっともない姿をさらけ出して手のうちを明かしたということもあるが、もう本音をさらけ出すことが怖くなかった。