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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】







「なんだ」

言葉が震えたのは、安堵のためだ。

「なんだぁ……」

涙腺が完璧に壊れた。
恐ろしいほどにぼたぼたと零れるそれにはまた笑った。
そして笑おうとして失敗した。
稽古場で笑おうとした時と同じようにうまくいかず、嗚咽が漏れる。

「……っ、……ふッ」

その瞬間、力強い腕に抱きとめられた。
香る五条の体臭。
強く、すがるようにかき抱かれる。

あの時と同じように服は肌蹴ていて、みっともなく泣いてしまってはいたが。
五条は、を抱きしめてくれた。
あの時、石のように硬直していた彼の腕が今ではちゃんとに優しく回されている。
もうそれだけで、いいような気がした。

頬を伝った水滴が口に入る。
塩っぽいそれは、の喉奥を伝い身体の中に染み込んだ。
たったそれだけで、からからに乾いた喉が潤された気がするのはなぜだろうか。

五条も今、同じ気持ちであればいい。
そうであったら、いい。
は大きな腕を、もう拒もうとは思わなかった。



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