第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
の言葉を聞いて瞼をおろした男は、震える吐息をゆっくりと吐き出した後、唇をかみしめた。
強く、強く。
血がでるほどに。
きっと、歌姫との会話で確信を得ていたのだと思う。
ごめん、と動きそうになった唇を伸ばした指先で抑える。
五条は驚いたように目を開いた。
「謝らないで……もう」
強く、指先を押し付ける。
後悔と贖罪の念でゆらゆらと揺れている綺麗な瞳を封じ込めるように。
「謝るくらいならもう、しないで」
キツイ言葉が出てしまったが、これぐらいは許されるだろう。
下を向きそうになった五条を押し留め、目を合わせる。
吸い込まれそうな黒い瞳に、文字通り吸い込まれるようにの唇から言葉が零れ出た。
「悪いと、思ってるなら」
ゆっくりと、なぞるように。
湿った唇に触れる。
「別のこと、して、ください」
さっきはあんなに冷たいと感じた唇が、今はこんなにも温かい。
「さっきの、あんなのは、嫌です。あんなの、初めてだったのに……」
指先に血がついたが、構わず形のいい唇に触れる。
この唇に酷いことを言われてきたというのに、触れたくて仕方がなかった。
の意図を察した五条は、顔を固まらせた。
本気で驚いたというようなその表情に、は大胆な自分の行動に途端に羞恥を覚えた。
「あっ、い、いやだったら……別に、いいんです……」
なにを言っているんだろう、私は。