第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
怖かった。
その感情が理解できなくて。
それでも、今ならわかる。
それは怒り、なんていう簡単なものではなくて。
きっと。
「五条先輩」
の静かな問いに、五条が顔を上げた。
みっともなく歪んだそれ。
まるで、断罪を待ち怯えている罪人のような表情。
なんて情けない顔しているんだろう。
私も大概だけど、目の前の最強の呪術師も大概だ。
「―――怖かったですか?」
は、そんな五条の顔をしっかりと見据えた。
だからはっきり見えた。
五条が、静かに目を瞬かせたのが。
「私に捨てられるって思って、先輩は、怖かったの……?」
ゆっくりと見開かれるそれに、は確信した。
が五条に嫌いだと叫んだ時、五条は豹変した。
どうしようもない程に怒りに満ちていたためあんな行動に出たのかとも思ったのだが、そうではない。
に捨てられたと感じて。
自分ではコントロールすることのできないほどの恐怖を感じて。
あんなに周りが見えなくなるほど、鬼気迫る勢いでを縛りつけようとしたのだと。
眩しいものを見たというように、ゆっくりと目を細めた男は静かに、しかし確かに頷いた。
男の喉が鳴る。
溜まった唾を飲み込むその仕草。
そのどうしようもない表情に、もまた顔が歪んでいくのを抑えられなかった。
にとっても好きな相手に嫌われるということは、身も凍るほどの恐怖だったのから。