第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「言えない」
小さいが、しかしきっぱりとした声が頭上に落とされる。
の懇願は、虚しくも地に落とされた。
やめてと、拒んだの腕を振り払った時のように、それでいて全く異なる既視感に眩暈がする。
は目を瞑った。
それしかできなかった。
「もう、そんなことは言えない」
やめて。
「オマエの、全部が欲しかった」
やめて。
「ごめん」
聞きたくない。
聞いてはいけない。
耳を塞ぎたいのに、腕が動かせない。
見えない何かに捕まれたように、だらりとシーツの上に垂れたそれは力もこもっていなくて。
お願い、それ以上の言葉を聞いてしまったら。私は。
お願いだから―――やめて。
「―――好きで、ごめん」
その瞬間、は顔を上げたことを後悔した。
好きでいることを謝った男がまた一つ、透明な涙を零したからだ。
なんて、悲壮に満ちた告白なんだと。
は場違いにも笑えてきた。