第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「今日だって、女らしさの欠片もない身体だって、馬鹿にしたじゃんか!!」
抱かれるたびに言われた言葉に、塞がってもいない傷にナイフを突き立てられて。
「オマエなんかの子供、なんて、いらないって……!!いらないって、笑ったじゃんか……!!」
何度も何度も抉られて、心の傷から溢れ出る鮮血に、溺れそうになっていたのに。
それが、好きだなんて。
そんな、馬鹿げた話、あるわけない。
あってたまるか。
「嘘だ!!嘘だよ!!嘘なんでしょ⁉ねぇ!!」
五条は抵抗しなかった。
普段ならが触れた場所でさえ汚いと拒むのに、のなすがままに首を揺らされている。
ただただ唇を噛みしめ、小刻みに揺れる睫の下から悲哀に満ちた瞳でを見つめるだけで。
―――苦しんでいる。
そんなの、見ただけでわかる。
だってその顔は、あまりにも。
「……言ってよ、嫌いだって」
震えている。
自分の手が。
「嫌いだって、私のこと嫌いだって……言ってよ!!」
いつものの顔に酷似していたから。
つらいと、ただそれだけの感情に苛まれて。
「言ってってば!!いつもみたいに!!」
身動きひとつ、とれやしない。
は絶叫した。
それに呼応するように開かれた五条の口は、何かを発することなく再び閉ざされる。
喉まで出かかっている言葉を何度も飲み込むその姿は、つい先ほどに髪ゴムを手渡した時の姿と被った。
やめて。
「言って、よ……」
お願いだから。
「言って、くださいよ……。私はもう、裏切られたくないんです」
ずるりと、五条の襟を掴んでいた手が落ちる。
「もう、もう……あんな思いするのは、沢山なんです……」
五条から先に視線を外したのはのほうだった。
真っ白なシーツに、未だに落ちる水滴は果たしてどちらのものなのか。
赤くないだけできっとこれは、血だ。
の。