第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
これは、本当にあの五条悟だというのだろうか。
いつも冷徹な瞳でを見下し、嫌悪し、侮蔑の籠った眼差しでを扱き下ろしてきた。
つい先程まで、恐ろしい笑みを浮かべを抑え込んでいた、あの。
こんな悲壮に満ちた目。
まるで、別人じゃないか。
「嘘じゃない」
「うそだ」
「違う、本当だ。が好きだ。好きで好きで、たまらないんだ」
「やめてっ!」
ドン、と、強い力で男を押しのける。
もう手首は押さえつけられていなかった。
足も、がもがけば弾かれたように離れた。
目の前の、ひしゃげた顔をした男から逃れるように、後ずさる。
「先輩、私のこと嫌いだったでしょ!ずっと嫌いだって、言ってたじゃん!」
今度はが悲鳴を上げた。
顔を合わせるたびに気にくわない、嫌いだと言われても、ちっとも慣れなかった。
言われるたび、死んだように生きていたの胸倉を掴み、立ちあがらせてくれたあの声に嘲笑されるたび、心が真っ赤な血を流して。
ずっと止まらない。今でも。
心が痛くて、たまらないのに。
「だから、あんな、―――私に、あんなこと!!」
唾を飛ばす勢いで、声を張り上げる。
自分でも、身を切るような叫びだと思う。
「違う!」
五条に、痛いほどに肩を掴まれる。
その顔は、怒っているようにも見えた。