第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
頭ががんがんと揺れる。
今自分がどこにいるのかさえ忘れてしまいそうになるほどの衝撃に、目が眩んだ。
「―――それを言いたくて、追いかけてきたんですか」
声が震える。馬鹿だ、私は。
「私は、おもちゃだから、今日みたいに逃げることも、許されないって……?」
忘れられたと思っていた。
髪ゴムの件を覚えていたのなら、五条は何らかのアクションを起こす。
今でもそんなものを使っているのか、気味の悪い子供だなと一蹴されていたことだろう。
だから、髪ゴムを手渡されたあの時は、の短くなった髪を嘲笑いに来たのだとばかり思って哀しみに苛まれのだが、五条に引っ張られている時考えたのだ。
五条は、の怒声を浴びながら顔をこわばらせた。
そして今思えば、髪ゴムを渡してきた時も、つらそうな顔をしていたのかもしれない、と。
だから、もしかしたら、にした事を、泣かせた事を悔やんで追い駆けてきてくれたのかと、そう思って。
それが、どうだ。
「なんだ」
淡い期待は打ち砕かれ、―――この様だ。
「なんだ……」
初めて犯された時、の口から零れ落ちる苦悶の悲鳴を聞きながら、五条は誰もが見惚れるような綺麗な笑みを浮かべて、言ったじゃないか。
いい顔だな、と。
オマエを抱いたからと言ってオマエが好きなわけじゃない、勘違いするなよ。
使えそうなものがあったから使っただけだと。
これからも好きな時に使わせてもらうよと、嘲笑ったじゃないか。
「なんだぁ……」
自由になった左手で、視界を覆う。
あっという間に歪んでしまった視界を、五条に見られたくなかった。
恥ずかしい。
みっともない。
惨めで、苦しい。
ここでようやく自分の気持ちに気が付くだなんて。