第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
―――なんで。
初めての感触に、戸惑う。
かさかさに乾いた五条の唇が、の唇を押し上げる。
その薄い唇の冷たさに、ひくりと喉が跳ねた。
「ん、んん、ふっ……う!」
歯列を割り裂き、侵入してこようとする舌の熱さに翻弄される。
必死で歯を食いしばれば、苛立ったように唇に噛み付かれた。
「ぁ"ッ……!」
痛みの声を上げた口内に、すかさず大きな舌がねじ込まれる。
優しい動きとは程遠い、激しいそれ。
手足を必死にばたつかせるもビクともしない。
何度も角度を変えながら押し込まれる鬼気迫るような口づけに、視界が揺れる。
男の全体重の負担を一心に背負った手首が、ぎしぎしを音をたてて軋む。
痛い、痛い、痛い。
「やっ……!」
息継ぎのために離れた隙を見計らい、顔を背ける。
口の端から零れ落ちた唾液が気持ち悪い。
それでも追ってくる執拗な唇から逃れるように何度も首を振る。
いや、いやだ、こんな、温度のない、冷たいキスは。
「なんで嫌がんだよ」
咽るを見下ろしながら落とされる声は、やはり冷たい。
「そんなに俺が嫌いか」
何言ってんの、嫌ってるの先輩のほうじゃん。
そう言いたいのに、あやまって気管に流し込まれた粘つく唾液に声を奪われる。
「あいつとはできて、俺とはできないのか」
無機質なまま、温度もないまま、追い詰めてくる声に返すこともできない。
あいつとはできて?どういうこと。