第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「で?」
五条の乾いた唇が、弧を描く。
「あいつには、慰めて貰えたのか?」
落ち着きはらった声。
なんの躊躇もなくよどみなく放たれるそれに、は目を瞑った。
耐えられない。
もう、目の前の男を視界に入れたくなかった。
「……どうでも、いいでしょう。そんなこと」
冷静に責めてやりたいのに、声がどうしても震える。
初めて、五条に犯された時のことを思い出してしまったせいだ。
壮絶な冷笑を浮かべを外で犯し、未知の恐怖に怯え抵抗しただったが、何もできないまま無遠慮に押し入ってくる不快感に顔を歪め、熱した杭で身体を串刺しにされる程の痛みが嫌でも蘇る。
当たり前だ。
あの時のはまだ未経験で、相手はあの五条だ。
体格差など言うまでもなければ、労わるという概念を持ち合わせていないような男だ。
声だけは上げまいと食いしばっていた唇も、あまりの激痛に解けた。
嫌な記憶だ。
は頭を振る代わりに手のひらを握りしめた。
「例え、私が川崎くんとどんな関係だったとしても先輩には関係ないことです」
「関係ない」
オウム返しのように繰り返す男を、見る。
眼前に広がる五条の顔は、本当に能面のようだった。
かかる冷たい吐息。
そういえば男に正面から押し倒されるのは初めてかもしれない。
それまではずっと、あの稽古場で這いつくばるように後ろから押し入られていた。
オマエの顔を見ながらしたくないと、そう罵られたこともついこの間のことのようだ。
見たくないなら今すぐこんな馬鹿な行為を止めろと言えば、穴は黙っていろと冷たく一蹴されたことも。
「そうだな、関係ないな」
でも、と呟いた男が、笑みを消した。
「―――関係なくても、構わねえ」
ぎらりと不穏に輝いた瞳が、間近に迫る。
近い、そう思った時には。
「ん……ッ」
唇を塞がれていた。