第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
怖い、と思った。
今の五条は何をするか、何をされるのかわからない。
もしかしたら、このまま容赦なく手を振り上げられるかもしれない。
先ほどみたいに首を絞められるかもしれない。
そんな不安に苛まれる。
「いい加減にしてください!なんなんですか、先輩はッ」
怯えていることを悟られたくなくて声を張り上げ睨み付けるも、押さえられた手首から伝わる僅かな震えに、五条は気がついていたらしい。
五条の唇が、ようやく笑みのようなものを浮かべた。
それでも、ビー玉のような青い瞳は相変わらず昏い深淵のように讃えている。
「なぁ」
静かに落とされた声はとても静かで、色がない。
背筋が冷える。
ずぶずぶとベッドに沈んでいく感覚。
まるで底なし沼だ。
身体が動かない。
「あいつ、オマエの彼氏か」
「……」
声を失った。
あの少年というのは、もちろん川崎くんのことだろう。
問題はその次だ。
彼氏?
「そんなわけ、ないです……」
絞り出すように答える。
喉がからからに乾いてしょうがなかった。
抑えられた手首も、ぎりぎりと痛む。
「髪を触られても顔を寄せられても、抵抗しなかったのにか?」
抵抗。
それは、昔からの知り合いだからだ。
中学の頃、くだらないことで口喧嘩や殴り合いの喧嘩もした。
そんな相手に触れられて今更拒むもなにもない。
そう言おうと思ったのに、声を出すのがはばかられた。
五条はから目を逸らさない。
いつもは目に入れたくもないとばかりに直ぐに逸らされる瞳が。
飲み込まれそうな青に、縛られる。
叫びだしたくなるほどの緊張感だ。