第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「先輩っ」
悲鳴のように声をあらげたのにも関わらず、は勢いのままベッドに投げだされた。
柔らかくはあったが、顔からシーツにダイブさせられた衝撃に目が霞む。
「……ぅ」
頭をふって視界をなんとか正常にしようとしたが、急に背後から押さえつけられ再びベッドに沈む。
首筋にかかる熱い吐息。
五条の大きな体に後ろからのし掛かられて、みっともなく上擦った声が出た。
「はっ、離して!」
なんとか体から這い出ようと腕を振るうも、強い力で捩じりあげられそれも叶わなくなる。
それどころか、肩を痛いほどに捕まれ振り向かされ、両手首を押さえられた状態で押し倒された。
目の前に広がった五条は、先程と変わらない表情をしていた。
口元には、人を小馬鹿にしたようなシニカルな笑みすらない。
先程川崎くんに見せた癇癪じみた怒りの顔とも、の溜めこんでいた罵詈雑言の反撃に硬直した顔とも違う。
感情を全て削ぎ落した人形のような顔だ。
整っている顔立ちなためになおさらそれが顕著だ。
冷静になろうと頭の中で思考を巡らしてはいるが、本能的な恐怖に身体が強張るのは止められなかった。
「な、なんなんですか。こんな所に連れてきて」
五条はひどい人間だが、に物理的な暴力を加えることはしなかった。
初めてこの男に身体を奪われた時も、強引で容赦はされなかったが、抵抗するを殴ったりはしなかった。
先ほどまでは。
それまでは言葉の暴力で散々心をぐちゃぐちゃにされていた。
だからいいというわけでもないが。