第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
何も言えずを見下ろすしかない。
これはなんだと問われても、どんな女性の前でもすらすらと睦言を奏でていた唇が、今は鉛のように重く動かなかった。
の前では、の前だけでは、今までのちっぽけな経験など無に等しい。
生まれて初めて、心から底から、飢えた獣のように渇望した女性なのに。
『―――いい加減にしてくださいっ』
『なんなんですか!こんなの、こんなの持ってきて!!泣いた私がそんなにおかしいですか、馬鹿にしにきたんですか!』
『先輩は私のことが嫌いなんでしょう!だからあんなことを……ずっと』
『先輩に喋るなって言われたから喋らなかった!目障りだって言われたから極力顔見せないようにした!笑うなって言われたから先輩の前では笑わなかった!?髪だって……っ』
の痛みが、突き刺さる。
今までがここまで取り乱したことはなかった。
こんな、幼い子供のように爆発してしまうほどに追い込んでしまったことが、哀しい。
腕を伸ばして抱きしめることもできない。
言葉が出ない。
からからに乾いた口では、彼女の名前を呼ぶことすら叶わない。