第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
離したくなくて、少年に捕まれていた腕を掴み上げる。
これは嫉妬だ、わかっている。
自分以外の人間がに触れるなど、名を呼ぶなど、許せなかった。
よほど痛かったのか、が小さな悲鳴を上げた。
その身を切るような声にはっと思考を取り戻して、慌てて離した。
目を見開く。
その目は赤く腫れ上がっている。
それを目に入れた瞬間、切り裂かれるような痛みに襲われた。
きっと、ずっと泣いていたのだろう。
その頬に、短くなった髪に触れたくて手を伸ばす。
しかし、は怯えたように身体を震わせ後ずさった。
心に、冷たいものが積み上げられていく。
それでも、これは当たり前のことだ。
今まで五条がにしてきたことを思えば当たり前のことだ。
好きな相手を自分のせいで苦しめている、怯えさせている。
それがどうしようもなくつらかったが、これは五条のエゴだ。
ましてや、自分の前でも笑ってほしいと、願うことなんてなおさら。
重い自責の念に駆られながら、胸ポケットにしまっていたものを取り出す。
ここに来る前に雑貨屋で買ったそれを、今度こそそっとの手のひらにそれを置いた。
どうしてオマエは、これをずっと身に着けていてくれたんだ。
そう問うつもりだった。
しかし、先程の少年との光景を見るにが自分をそういう意味で好いていてくれたという考えは脆くも砕け散った。
愚かな期待だった。
いや、期待すること自体おこがましいことだった。