第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「い……ったッ!」
無理矢理連れてきたラブホテルの部屋に、小さく縮こまる彼女を押し込む。
歩いていた時には何度か声を張り上げていた記憶はある。
他の雑音は聞こえなかった。
妙に冴えていた頭では、の声だけが鮮明に耳に響いていた。
それでも、言葉を返すことはしなかった。
返せなかった。
雑貨屋であの青に似た髪ゴムを見つけ買ったのは、の喜ぶ顔が見たいと思ったからだ。
を見つけることができたのは、輝くような黒髪が目にはいったからだ。
そして、声をかけようとした時にの直ぐ傍に人がいることに気が付いた。
―――昨日の少年だ。
黒い髪の毛に金色のメッシュ、毛先はパーマでウェーブのかかっている髪、目尻のつり上がった少し色素の薄い茶色の大きな瞳の少年。
背はそこまで高くもないが、低くもない。
成長期の途中というところだろうか、よりはもちろん高い。
遠すぎて、声は聞こえない。
そんな少年が、の腕を掴んでいる。
とても近い距離だ。
昨日見かけた時よりもはるかに。
ごく自然な動作で、の髪に触れる。
五条のせいで短くなってしまった髪を一房。
は拒まない。
むしろ、自分から寄っているような気さえする。
そして少年は身体をかがめ、さらにに顔を近づけ、そして。
ここからでは、の後ろ姿しか見えない。
それでも、二人は、二人の影は、確かに重なったように見えた。
考えるより先に身体が動いた。
二人の間に割り込む。
彼女を奪うように抱きとめた。
案の定、は暴れた。
あの少年には、抱きしめられるほど近くによられて抵抗もしなかったのに。