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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】






先程、自分の口から零した言葉をもう一度舌にのせる。
何度も何度も口に出して、何度も何度も心の中で毒づいて。
違うのは、場所が室内ではないということと、己の愚かさをはっきりと自覚したことだ。

に惹かれていることを認めたくなくて、記憶の底に封じこめてしまった記憶。
思い出せばあっさりと、胸に落ちてくる。
を好きだと自覚した、あの時のように。

無意識にポケットに手を突っ込んだが、あの日入っていた髪ゴムは今はない。
稽古場に戻って、の髪の毛と共に捨てたそれを拾おうにも、それは五条の手によって原型を留める事なく小さな塊としてゴミ箱に鎮座している。

何もかもが嫌になる。
自分の行動全てが。
こんなにも裏目に出て後悔することになるなんて。
過去の自分を殺してやりたい。

どうしてアイツは、今でもあの髪ゴムを身につけているんだろうか。
ただの惰性か、いや、自分を容赦なく扱き下ろす男から貰ったものなど、普通は捨てるはずだ。
五条ならばそうしている。
それに、いくら優しい性格とはいえ手酷い扱いを受けているなら、尚更毎日のように身につけはしない。
髪ゴムなんてそこらへんで売っているんだから、新しいゴムでも買ってそれを身につければいいはずなのに、それなのに、なんで酷い裏切りをし、信頼を虫ケラのように踏みにじられてもなお、はそれを使い続けるのか。

その理由を知りたい。
に聞きたい、聞かなければならない。
自意識過剰だと言われるかもしれないが、もし、もしも。
彼女が髪ゴムを使っていた理由が、五条の予想通りのものだったのなら。
違うかもしれない。
彼女は実は正義感が強く優しい人間だから、他人から貰ったものを捨てきれないだけだったのかもしれないけれど。
それでも、もしも、そうであったのなら。
俺は、取り返しのつかないことをにしていたことになる。



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