第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「ありえねえだろ。だって、俺は……。歌姫だって知ってんだろ。俺があいつにどんな態度を取ってたか……」
「知ってるわよ。アンタをぶん殴れるならそのお綺麗な顔が歪むまで殴りたいし心底アンタを軽蔑してる」
可愛がってる後輩のために歌姫は怒りを表しながら、それでもグッとその怒りを堪えている。
ふぅ、と短い息を吐いた歌姫は一つ咳払いをしたあと、空を見上げる素振りをした。
何か、思いだしているのだろうか。
「髪」
「―――髪?」
ぽつりと落とされた言葉に、五条は身体をこわばらせた。
髪、その単語は今の五条を一番動揺させる言葉だ。
「、入学したての頃、任務で一緒になってその時によく男になりたいって言ってたの」
唐突始まった昔語りの真意がつかめず、五条は歌姫を見つめた。
「でも、ある時から言わなくなった」
「ある、時」
「言わなくなったどころか、その時を境に鏡をちゃんと見て、髪を毎日とかすようになったの。お手入れするのが面倒だって言っていた子が」
髪をとかす。
それは普通の少女ならば普通のことだろう。
しかし、歌姫は五条のその言葉に軽く首を振った。
女の呪術師が求められるのは完璧。
容姿も実力も無ければ、呪術師としてのスタートラインに立てない。
そのことを理解していたは、日頃から男になりたいとぼやいていた。
それは、男であれば実力がなくても女よりはまだましな対応をしてもらえると、遠回しな言い分をずっと述べていた。
だけど、そんな無い物ねだりをしたところで何も変わりはしない。
ならせめて、髪の毛だけは女性らしく伸ばそう。
そんな思いを、歌姫はから聞いていた。