第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
歌姫は鈍い部分もあるが鋭い部分も持ち合わせている。
特に自分が大切にしている人間になればなるほど、些細な表情の変化にも気付く。
に何かしたのかと、言葉外に問うているのだということは五条にもわかった。
「ああ……」
拳を痛いほどに握りしめる。
今日は五条に組み敷かれながら、ずっと拳を握りしめていたのを思い出す。
血がでほどに強く。
今日だけではない、彼女は犯されながらいつも拳に爪を食い込ませていた。
きっと、今五条が感じている痛みとは比べ物にならないほどにつらく、苦しかっただろう。
「酷いことをしてた……ずっと」
唸るような声。
俯いて下を向く。
五条の懺悔に、歌姫は何も言わなかった。
「五条」
少しの沈黙。
それを破ったのは、耳に響くような優しい声。
いつもの歯向かうような声ではなく。
どこか諭すような母親が子供に言い聞かせるような、そんな声。
「あの子は、アンタのこと信頼してる」
どんな怒りの言葉が飛んでくるのかと身構えていた五条は思いがけない言葉に拍子抜けして、歌姫を見上げた。
「は?」
「あの子、五条のこと好きなのよ」
「……なに、言ってんだよ。は?あいつが、俺を?」
夏油と家入にが好きだと自覚させられた時とはまた違う衝撃に、声がどもる。
好き、という言葉。
その言葉に深い意味はないだろう。
それでも、に好かれるようなことをした覚えのない五条は狼狽えてしまった。