第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「が、いなくなった」
だから、ほんの少しの嘘を交えた。
その原因を作ったのは五条自身だということを内心に秘めて。
「いなくなった?」
「……あぁ」
この様子だと、歌姫はを見ていない。
焦りが募る。
これほどまでに、狂おしいほどに、誰かを想うのは初めてだった。
初めてだったからこそ、自分の気持ちを理解することができなかったのだろうが。
本当に情けない。
「五条」
妙に歯切れの悪い五条に、歌姫は何かに気がついたらしい。
「間違ってたら謝るけど、一つ聞いていい?」
目を据えて五条を見る歌姫。
「と、何か……喧嘩でもした?」
喧嘩、という言葉を使いはしたが、それは歌姫なりの優しさゆえの言い方。
歌姫の前でも、五条はに冷たい態度をとることを止めなかった。
あえて慕っている人間の目の前で侮辱し、叱りつけたこともある。
それも些細な理由で。
歌姫はそんな五条に反抗はしたものの、何を言っても聞く耳を持たない五条に呆れ、一人傷つくを何度も慰めていた。