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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】






ああ、くそ、駄目だ。
五条は頭を振った。

思い出したくもない記憶が次々に出てくる。
の姿はどんな時でも鮮明だ。
いつもそうだった。
気付けばのことを考えていた。
気に入らない存在だから頭から離れないのかと思っていたが、これこそが恋だということに、どうして今の今まで気が付かなかったのか。

「歌姫、は……」

そこまで言ってから口を閉ざす。
何を言えばいいのかわからなかった。
ずっと、脅して身体の関係を迫り、傷つけ、挙句のはてに髪を燃やしてしまったなどと、言えるわけがない、言えるはずもない。

歌姫は鈍い部分もあるが鋭い部分も持ち合わせている。
特に自分が大切にしている人間になればなるほど、些細な表情の変化にも気付く。
歌姫に五条との関係がバレないように、は歌姫の前ではいつも笑っていた。
ずっと、神経をすり減らしていたに違いない。

歌姫とは仲がよかった。
弱い者同士何か惹かれ合う何かがあるんだろうと見下していたが五条だが、今ならわかる。
世話焼きで面倒見のいい歌姫の性格にが懐き、歌姫もまたの人懐っこく明るい性格を好いているのだ。

そんながいつも我慢していたのは、誰にも心配をかけないようにするため。
それが彼女の精一杯だったと言うのに、ずっと嫉妬して、子供じみた真似をしていた。
が隠したがっている事実を、五条の勝手な懺悔の念から口から出すことはためらわれる。

それを聞かされた時の歌姫の衝撃と、の苦しみを思えば。
そんなこと、は望んでいない。
罪を告白し懺悔することは正直でいて最大の逃亡だ。
裁かれたいと、許されたいと願っている証拠だ。
背負うこと諦め投げ捨てるなんてできない。
これ以上、を裏切りたくはなかった。



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