第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
高専を出て少し走った場所に、見知った人物がいるのを見つけた。
五条が声をかける前に此方に気がついたその人は、振り向く。
「五条」
五条の姿を見た瞬間に女性―――庵歌姫は眉間に皺を寄せた。
いつもの巫女姿ではなく私服なところを見ると、オフなのだろう。
「歌姫」
「どうしたのよ、そんなに慌てて」
普段と違う余裕のない五条に歌姫の眉間はさらに深く皺を刻んだ。
首を少し傾げた歌姫は軽く息を吐く。
「私、この後と出かける約束してるんだけど、まだ高専にいる?」
その言葉に心臓が重くなる。
五条はいつも、遊びに来たを抱いていた。
壁一枚挟んだ教室の向こう側、いつ誰が来るかもわからない稽古場、野外、その他もろもろ。
そのことを歌姫は知っているのか知らないのか。
歌姫の態度を見る限り、知られてはいないのだろう。
それもそうだ。
は五条との関係を持った時、歌姫と一緒に高専に来ることはなくなった。
歌姫より先に来るか後から来るか。
その二択だった。
行為の最中、扉の向こうに誰かがいるかもしれないという思考に耐えられないと苦しむ姿にひどく興奮して、隣にいる誰かに聞こえるようにといつも以上に酷く抱いて無理矢理声を上げさせた。
察知能力の高い同期たちが、後輩や歌姫を連れてその場所から遠ざけていたことをに知らせずに。
「俺がオマエとの関係を他人に知られるようなことするって本気で思ってんの?すげえ自信だな。そんなの、俺の方から願い下げだっつうの」
呆然と目を見開いたを見下ろし、そう嘲笑ったのだ。